2014/03/27
ART: IMA CONCEPT STORE
写真の見方を深く知る #2

"LIVING WITH PHOTOGRAPHY"をコンセプトとする『IMAメディアプロジェクト』の一環として、『IMA CONCEPT STORE』がオープンした。ギャラリースペースで展示を行い、写真にまつわる書籍やグッズを販売し、イベントも随時行う。このリアルスペースは雑誌やウェブと連動してどのように展開するのだろうか。
text by Ryohei Nakajima
ART: IMA CONCEPT STORE 写真の見方を深く知る #1はこちらからご覧いただけます▶▶▶
雑誌やウェブで培われてきた『IMAメディアプロジェクト』のトーン&マナーを守りながら、『IMA CONCEPT STORE』ではセクションごとの担当者がディレクションを行う。ギャラリーの展示は基本的に雑誌『IMA』の編集部が担当し、そこにプログラムが連動することで広がりが生まれる。ブックコーディネーターの永井雅也さんは、「今は携帯電話にもカメラがついていて誰でも写真を撮ることができる時代ですが、本や作品として発表できる人との絶対的な違いがあるので、そういうところを写真集を通して知っていただきたい」と語る。
「ブックスペース全体としては、ただ単純に写真関連の本がアーカイブされているのではなく、棚ごとのコンセプトを明確にしてコーナーを作っていきます。もちろん写真集は、それ1冊を見るだけでも楽しめますが、1冊で完結せずにつながりを知ることで作品の魅力をより深く知ることもできます。ある写真家がその写真集を作るためにクラシカルな写真家から影響を受けていたり、異なるジャンルへの興味から発想を広げていたり、つながりを見せることでより立体的に写真に触れることができます。写真集や写真論、写真が登場する小説など、2,000冊程度の本でスペースを構成します」
写真家の世界観を知るための体験型イベント
オープニング企画としては、石川直樹、梅佳代、蜷川実花、ホンマタカシ、若木信吾などの人気写真家が、異業種の表現者や研究者と対談を行う。すでに満員で応募が締め切られた回も多いが、写真家の作品世界をより深く理解できることを大前提に、魅力的な組合せがラインナップされた。
「異業種の方と写真家が対談することによって、写真を、一方向からだけではなく、幅広い見方で楽しめるということを知っていただきたい」と説明するのは、プログラムコーディネーターの牧信太郎さん。「写真を撮るためのテクニカルな部分を学ぶ場所や機関は日本に割と多くあるんですけど、見ることを学んでその力を養ったり、写真によって幅広い体験をできる場はほとんどないので、それができるイベントやワークショップを想定して企画しています。オープニング企画の一つとして、森山大道さんによるシルクスクリーンのワークショップを行うのですが、森山さんの作品から何点かの版を選び、それを参加者の方々と一緒にシルクスクリーンにします。"写真で世界をコピーする"といったような森山さんのスタンスをシルクスクリーンの作業で体験して、最後には額装して森山さんにサインしていただくことで、飾る喜びも感じることができるわけです。そうした企画によって、お客さまが写真を楽しむ方法を段階づけて広げていきたいです」
"LIVING WITH PHOTOGRAPHY"実現のために
カメラやフィルムが高級だった時代には、一瞬を残すために大切な瞬間を見極めて写真が撮影されていた。また、人が簡単に行くことのできない場所を見せるために写真を撮った冒険家がいれば、動物や人の動きの一瞬を切り取る技術を実現した写真家もいた。最近では、携帯電話で決定的瞬間を収めた写真がニュースソースとして価値を持ち、ファッションや料理、ペットなどの写真もSNSなどを通じ、広く共有され、拡散している。このように写真の役割や表現は時代ごとに変遷をたどり、楽しみ方もまた変化を続けてきた。
雑誌『IMA』はさまざまなアート写真とそこにまつわるストーリーを伝え、オンラインでは豊富な情報がアップデートされていく。『IMA CONCEPT STORE』では、写真の見方を知り、体験できる機会を幅広く演出することで、写真を楽しむための間口をさらに広げてくれる。そして、写真家とのコラボレーションでグッズを発売し、ギャラリーではエディション数を増やして価格を抑えた作品も展示するなど、従来よりも手軽にアート写真を購入できる空間にもなる。「"IMA CONCEPT STOREで初めて作品を買ったんだ"という人が増えてほしい」。『IMAメディアプロジェクト』に携わるスタッフがそうした意思を共有し、写真の魅力を広く伝えていく。
* * *