2014/03/20
ART: IMA CONCEPT STORE
写真の見方を深く知る #1

雑誌『IMA』とウェブサイト『IMA ONLINE』のディレクションに、写真関連イベントやセミナーなどの開催を連動させて展開する『IMA メディアプロジェクト』。"LIVING WITH PHOTOGRAPHY"
をコンセプトとして2012年8月に立ち上がったこのプロジェクトに、写真の楽しみをリアルに提供する複合スペース『IMA CONCEPT STORE』が加わった。雑誌、ウェブ、リアルスペースという3つのアウトプットをどう使い分け、連動させて写真の魅力を伝えていくのだろうか。
text by Ryohei Nakajima
写真を「撮る」ことにフォーカスした雑誌は数多いが、アート写真やファッション写真が多く存在してもその見方に触れられる雑誌がない。写真の見方を知ることでより深くその魅力を感じ、"LIVING WITH PHOTOGRAPHY"を実現できると考え、雑誌『IMA』は創刊された。エディトリアルディレクターの太田睦子さんは、紙媒体だからこそ届けられる写真の魅力について次のように語る。
「本誌ではページによって10種類ほどの紙質を使い分けているんですが、体験として手でページをめくりながら写真を見るという身体行為は記憶に残りますし、写真を解説するテキストが付けられるのも雑誌の強みです。サイズや紙質など、複数の人が同じ条件で一人の写真家の世界観を共有できるのもメリットだといえるでしょう。また、例えば小説家や映画監督、画家など写真評論を専門としない方々の文章を通じて、写真に詳しくない方にもどうやって写真を楽しめるのかのアプローチのきっかけを作ることができると考えています」
(左から)ブックコーディネーター 永井雅也さん・プログラムコーディネーター 牧信太郎さん・ストアマネージャー 武内亮子さん・エディトリアルディレクター 太田睦子さん
創刊号で明確に提示した『IMA』のスタンス
その創刊号の特集記事の一つで取り上げたのが、ライアン・マッギンレーという写真家だった。1977年NY生まれのスケーターであり、周りのキッズのスタイルとストリートカルチャーの実状をスナップした写真が注目を集めて2003年に史上最年少でNYホイットニー美術館での個展を実現。それ以降、若い男女のヌードと動物たちをマッチングした写真作品や音楽映像などを自在に手がけるマッギンレーは、緻密な演出とスナップのようなナチュラルな風合いとを組み合わせた作品世界で圧倒的な人気を博している。
「創刊号でライアンを取り上げて撮影イベントも行ったんですが、もともとアート写真には興味がないけれど、音楽やファッションを通じてライアンを知っていたという若い方も多くいらして、定期購読を申し込んでくださる方も多かったんですね。『IMA』を通じて別の写真家を知り、写真への興味が広がるきっかけになる手応えのようなものを感じることができました」
古くから、ファッション誌で撮影をするフォトグラファーが自らの世界観を表現するために作品を手がけてきたり、従来のファッション写真とは違う世界観を作ろうとして新たな表現手法を生み出したり、アートとファッション写真はその領域の行き来を繰り返してきた。ライアン・マッギンレーのように、独自の表現がファッション界から注目される写真家は現在も多く、そうした異なるジャンルを自在に横断しながら写真の魅力を伝えてくれるのが、まさに『IMA』の強みだと言える。
Gallery、Book、Cafeのリアルスペース
手元でページをめくりながら写真を楽しめる雑誌の特性に合わせて、膨大な数の写真展の開催情報や写真集の出版情報を網羅するウェブサイト『IMA ONLINE』も同時期に開設。写真家の作品世界を理解するためのセミナーやイベントも断続的に開催してきた。そしてついに、3つのコンテンツで構成されるリアルスペース『IMA CONCEPT STORE』が3月15日にオープンした。アート写真を気軽に購入できる新スタイルの展示空間である『IMA gallery』。人気写真家による定番から、流通の少ない海外レーベルの写真集までを集め、明確な視点によって本棚を構成する『IMA books』。そして、写真を楽しみながら最高品質のコーヒーを味わえる『IMA cafe』。ストアマネージャーを務める武内亮子さんは、「お客様に最適なご案内をするために、ストーリーをうまく伝えることが重要」だと語る。
「お客様に興味を持って触れたり、見たりしていただくために、スタッフは写真を見ただけではわからないストーリーをうまくお伝えする必要があります。写真集について、作家について、歴史的な背景についてなど、お客様の興味が広がるきっかけになるような、ストーリーを語れるスタッフを育てていきたいですね」
次回は、現場を担当するプログラムコーディネーター、ブックコーディネーター、グッズコーディネーターの声も交えながら、『IMA CONCEPT STORE』の魅力をレポートする。
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