MEN'S

2025/03/14

CONVERSATION:YOKE × ANCELLM × BARNEYS NEW YORK #2

人気ブランドがクロスオーバーするコラボレーション。スペシャルな別注が完成!(後編)

2025年3月15日(土)より発売する、人気ファッションブランド<ヨーク>と<アンセルム>がコラボレートしたカプセルコレクション。バーニーズ ニューヨーク(以下:バーニーズ)では別注4アイテムを含む、全7アイテムのフルラインナップが登場いたします。

前編に続いて、両ブランドの相互理解の上での共同作業によって完成したカプセルコレクションのこだわりと、メッセージをお届けします!

今のメンズファッションシーンを人気デザイナーはどう捉えているか

髙橋直樹(以下、髙橋)寺田さんも山近さんもファッションシーンの最前線で物づくりをされていますが、今、自分はこういう方向性でブランドをディレクションしているとか、業界をこう見ているなどをお話いただけますか。

寺田典夫(以下、寺田)ファッショントレンドは昔ほど意識はしていなくて、お客様にもブランドごとの発信が直接届いていると思います。<ヨーク>も<アンセルム>も、別のブランドも、それぞれなんとなくの共通点はありながら、みんなが違う。自分自身もトレンドに流されなくなってきているし、お客様にちゃんと届けられれば、トレンドに関係なく着ていただけるはずだし、数年前からだいぶ変わってきていているのを肌で感じます。髙橋さんはどう感じていますか。

髙橋 コレクションを見ていると、クワイエットラグジュアリー(静かなる贅沢)といわれるシンプルで上品な装いのトレンドが長く続いていて、バーニーズのお客様もそういう洗練された着こなしが好きなのを感じています。そこにベースがありながら、今シーズン出てきている加工感のあるものやクラフトワーク的なものに注目してほしいという思いで買い付けをしていますね。

山近和也(以下、山近)髙橋さんのおっしゃるクワイエットラグジュアリーは意識しつつ、自分もシンプルで上質なものは好きですが、でもそれだけでは物足りない世代や人はたくさんいるはずで、<アンセルム>の服はそこにズバっと刺さるだろうと思います。自分自身も、ギミックや素材感などを"ちょっとずらしてあげる"ことにすごく意識しながら、それをお客様に届けたいと思っています。

髙橋 ありがとうございます。寺田さんの中では、自分の表現がしやすくなってきているということですね。

寺田 SNSなど発信の仕方は意識しながら、自分たちで発信して、自分たちで届けることをちゃんと強化していくという時代なんでしょうね。

髙橋 表現したものがお客様にきちんと届いて支持されていると感じていらっしゃるわけですね。

山近 寺田さんと同じく、<アンセルム>も我が道を行っているという感じですね。スタートがデニムの産地で、「加工技術の使い方を変えてマーケットに提案したら、もしかしたら受け入れられるんじゃないか」から始めたので、ちょっと変わった路線なのかもしれないですけど、これからも変わらずマイペースにと思っています。

髙橋 山近さんの出身地である産地ありきで物づくりが始まって、古着とは違うところの線をちゃんと引きながら、譲れないところはどこですか。

山近 譲れないところですか。かっこよく言うと、出荷前の商品は全部自分で見るなど、自分が納得したものをちゃんと届けたいなということですね。でも現場は高齢化が進んで、若い人は増えないし、なにか手助けができないかと考えています。

絶妙にクロスオーバーしている<ヨーク>×<アンセルム>コラボレーションの魅力とは

寺田 今回のコラボレーションでは、ダブルネームのタグも特別に作りましたが、<ヨーク>のデニム上下2アイテムを山近さんに加工をしてもらったり、<アンセルム>の加工Tシャツのボディに<ヨーク>の刺繍を入れたり、<アンセルム>のパターン(型紙)を使って<ヨーク>のウールトロの素材で作り替えるなど、本当に絶妙にクロスオーバーしています。共同作業でこのカプセルコレクションは、ある意味、別注の枠を超えていますね。

山近 このTシャツのボディは<アンセルム>が<ヨーク>の刺繍と相性が良い生地を選んで、いい意味で粗野なアメリカンに仕上がっています。

寺田 <ヨーク>のインラインで、ウルフ・カーンというドイツ出身のアメリカの画家の絵を刺繍で表現していますが、この別注Tシャツはモノトーンでを刺繍して、その上から山近さんに加工やペインティングをしてもらっています。

山近 グレーだけの若干の色の違いで風景を刺繍しているんですね。それを同じ黒で手作業でなぞっていくと、色差が出てきて、奥行きが出たり面白い加工になっていきます。個体差が出るのもいいですね。

髙橋 本当にコラボレーションならではの特別な1枚に仕上がっています。オーガニックコットンのボディと対極の加工というのはコラボレーションじゃないと実現できなくて、特別感がありますね。

山近 こういう別注はある程度枚数が少なくないとできないし、全部手作業というトライはすごくありがたいです。

寺田 ニットベストは、<アンセルム>のパターンを使っていて、<ヨーク>の生地を乗せて、デザインアクセントにサイドジップを付けています。

髙橋 フロントのポケットのカタチは<アンセルム>ぽいですね。ベースがしっかりありながら、「面白いことやろうよ」って言うと、アイデアもいろいろ湧いてきますよね。

山近 セットアップも<アンセルム>のパターンを使って、<ヨーク>が作ってくれた素材を使用した別注です。

寺田 何もないとこから何かを作ろうというのは大変ですが、こういう共同作業だと、いろんなアレンジが効いて本当に楽しく物づくりができました。

服づくりの楽しさの先に、バイヤーがいて、お客様がいます

髙橋 寺田さんは、服作りの楽しさはどういうところに感じていますか。

寺田 展示会のためにサンプルを作りますが、サンプルを見るたびに浮き沈みですよ(笑)。全然ダメだとか、これからどうしようとか、その繰り返しです。そうして展示会にバイヤーさんが来て、<ヨーク>の服を見て悩んでいる瞬間に、もう全部吹っ飛ぶというか、「どれを買うか悩みます」と言われるのが快感(笑)。そのために、展示会をどれだけの密度に高められるかをいつも考えています。

髙橋 山近さんはいかがですか。

山近 服づくりの楽しさ...、それはいいものが出来たとき、納得するものが出来たときですね。新しい加工やパターンなどはずっと探り続けているので、それが全部合致してできたときは、めっちゃ気持ちいいですね。そしてお客様に売れたときはもっとうれしいです。

髙橋 展示会でのバイヤーの反応は気になりますか。

山近 はい、すっごく気になります。それでバイヤーさんが悩んでいるのを見ると、めちゃくちゃうれしい。商品を見て、「前に進んでるね」と言われるとうれしいし、「ちょっと印象が変わっていい感じ」と言われるのもうれしいし、お褒めの言葉をいただけると、やっていてよかったなを思います。

髙橋 バイヤーの先に消費者がいるみたいな感覚もあるんですか。

寺田 バイヤーさんの反応を見て、満足してくれていると思うと、それはお客様にも届くと思うので、バイヤーさんたちに「これは新しい」と思ってもらえる物づくりに毎シーズン全力という感じです。

山近 今回の<ヨーク>とがっつり組んだコラボレーションは、そういう意味でもとてもいい機会になりました。

寺田 <ヨーク>のお客様と<アンセルム>のお客様は近いところにいるはずで、こうやって交わると、今までとは違う、すごくいい反響が生まれることも期待しています。

髙橋 いろんなお客様に見てほしいですね。バーニーズのスタッフにも着てもらって、積極的に紹介していきたいです! 今回はありがとうございました。

PROFILE

<YOKE(ヨーク)>デザイナー

寺田典夫

1983年、千葉県生まれ。美術大学を中退して、文化服装学院デザイン専攻科に進学。卒業後はドメスティックブランドで生産や企画を経験し、2016年に独立。フリーのデザイナーとして活動するかたわら、2018年秋冬シーズンにヨークをスタート。「TOKYO FASHION AWARD 2022」を受賞。

PROFILE

<ANCELLM(アンセルム)>デザイナー

山近和也

様々なブランドで経験と研鑽を積み、コロナ禍に突入する前、東京から出身地である岡山県にUターンして、2021年春夏シーズンに<アンセルム>をスタート。「視点を変えた経年変化の提案」をテーマに、"経年変化する"という視点から選んだ素材や加工を用いた、熟練の職人の手によるプロダクトを展開。着込んで馴染むことによって生まれる美しい服の表情を、新たな価値観として提案。

PROFILE

バーニーズ ニューヨーク メンズバイヤー

髙橋直樹

メンズ、ウィメンズのカジュアル/デザイナーズのアシスタントを経験。バイヤーに昇進して以来、メンズのカジュアルとデザイナーズを担当。現在はアート/ホビーなどのポップアップやコラボレート商品の企画等、新たな分野にも奔走中。