2016/04/28
MUSIC: PAT METHENY at BLUE NOTE
20度に及ぶグラミー賞受賞を誇り、2015年9月に日本で初開催されたBLUE NOTE JAZZ FESTIVAL IN JAPANでは、ヘッドライナーとして登場し観客を魅了したジャズ・ギタリスト、パット・メセニー。数々の伝説的な共演を行ってきた彼が、新たなバンドを率いて来日公演を行う。 text by Ryohei Nakajima
精緻な技巧でオーソドックスなジャズを耳に心地よく響かせることはもちろんのこと、スムーズな音の展開にエキゾチックなリズムと音づかいを組み合わせ、パット・メセニーのギターはジャズにとどまらない広がりを実現する。そのキャリアが彼の天才性を物語っている。
ジャンルを超えたジャズ・ギター表現
音楽一家に生まれたパット・メセニーは、8歳でトランペットを吹きはじめ、12歳でギターを手にした。独学でテクニックを磨くと、15歳のころには地元であるカンザスシティの人気ジャズミュージシャンたちとセッションを繰り返し、若くしてステージでの表現力も磨いていく。そして、ヴィブラフォン奏者のゲイリー・バートンの楽屋に自ら売り込み、1974年にバートンのアルバム『リング』でデビューを果たす。デビューを前に、その実力を認めたバートンの推薦で、当時18歳だったメセニーがバークリー音楽大学の講師を務める機会もあったというから驚きだ。 バートンのバンドメンバーとして活動した3年間で、天性のリズムとハーモニーのセンスを磨きあげた。そして、ジャズの伝統的なメロディとスウィングをベースに、独創的な広がりを加えたインプロビゼーション表現も注目を集め、さまざまなミュージシャンと共演を果たすようになる。ハービー・ハンコックやオーネット・コールマンといったジャズミュージシャンはもちろんのこと、デヴィッド・ボウイやジョニ・ミッチェルといったシンガー、ミニマル・ミュージックのスティーヴ・ライヒ、ブラジルのポップス音楽ムジカ・ポプラール・ブラジレイラを代表するシンガーのミルトン・ナシメントなど、多様なミュージシャンと共演を重ねてきた。
Photo: John Peden © 2015
新バンドが生む化学反応に期待
今年の来日公演のメンバーも多彩であり、そのセッションの展開に期待が高まる。ドラムスは2000年から活動をともにするアントニオ・サンチェス。アカデミー賞受賞作の映画『バードマン』でサウンドトラックを手がけ、グラミー賞を受賞した彼のスリリングなドラムスは、鳴りはじめた瞬間から何かが起こる予感を引き起こす。マレーシアとオーストラリアの血を引く女性ベーシストのリンダ・オウと英国出身のピアニスト、グウィリム・シムコックという気鋭のミュージシャンがステージに。複数のプロジェクトに並行して関わり、それぞれで異なる世界観を表現するパット・メセニーが、この3人とどんなサウンドを生み出すのか期待せずにはいられない。
5月16日の名古屋ブルーノートを皮切りに、国内三都市を回るツアーが開催される。大阪と東京・新宿ではホールでの公演を、名古屋と東京・青山のブルーノートでは、ステージと近い距離でミュージシャンの息づかいと表情を感じ、リズムとグルーブに身を浸したい。5月11日には、来日するバンドとは異なるプロジェクトだが、2枚の新譜『THE UNITY SESSIONS』『CUONG VU TRIO MEETS PAT METHENY』もリリースされる。最高のタイミングだ。
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PROFILE
PAT METHENY
1954年アメリカ カンザスシティ生まれ。ゲイリー・バートンのグループで活動後、1975年発表のアルバム『BRIGHT SIZE LIFE』でソロ活動をスタート。『WE LIVE HERE』(94)が世界的ヒットを記録し、現在まで、モダンジャズやロック、クラシックなど、ジャンルを問わず多様なコラボレーションを行っている。 Photo: Takuo Sato