SPRING 2018 LOOKBOOK FASHION AS MUSIC STORIES ニューヨークはそれでも聖地であり続ける | CULTURE | BARNEYS NEW YORK

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FASHION AS MUSIC STORIES #3

ニューヨークはそれでも聖地であり続ける

text: Yoshinori Kaneko

 映画「サタデー・ナイト・フィーバー」(1977年)の原作者ニック・コーンは、自著でこう述べている。「スーパーポップは、いつだってティーンのための音楽だ。受けないと話にならないんだ」。ジョン・トラボルタの濃いルックスと白いスリーピース・スーツの決めポーズ、ビージーズらのヒット曲とあいまって、今も70年代ディスコブームの代名詞のように言われる同作。トラボルタ演じる主人公トニーはブルックリンのペンキ屋で、週末だけマンハッタンのディスコで若いエネルギーを爆発させる。そうした当時の格差社会の描写が世界中で共感を呼んだのだ。ティーンの日常のリアル、それを都市近郊からの眺めで描くことの普遍性をコーンは伝えている。

 ブルックリンは、「受けないと話にならない」トライを、あきらめず何度も繰り返し発信してきた土地柄だ。サーストン・ムーアの変則チューニングギターが官能的なソニック・ユース。濃いサングラスやスポーティなラグランTシャツなど、彼らの折々のアー写スタイルアイテムが世界中のアートスクール系インディーズバンドに流行した。アフロを効果的にダンス・ミュージックに取り入れたヴァンパイア・ウィークエンドなどもブルックリン発の代表的なバンドで、いずれもマンハッタンに隣接しつつアーティストの自由な表現を重んじるこの下町をベースにしていた。音楽プロデューサーでありラッパーのJay-Zも、生まれと起業の地はブルックリン。ナダ・サーフのマシュー・カーズによれば、マンハッタンの音楽スタジオでは使用料が高すぎて、シンプルなバンドに有利だそうだ。

 そしてメジャーな都会と近郊のアーティストとの対比が、ブルックリンを超えて音楽シーンをより面白くしているのが、2010年代の事情である。息の長い好景気を背景にして、マンハッタンよりずっと空の広いブルックリン地区は投機や起業の地になってきた。倉庫街などを活動拠点にしてきたアーティストたちも、より安価な街へ移動せざるを得ない。今のヒップホップの全盛時代では、トラップがアメリカ南部から沸き起こったように、都会のスタジオでの音作りのしにくさも影響しているのだろう。オルタナティブの聖地もより遠い周縁に、いや地球各地へと拡散したようだ。

 そしてソーシャルメディアが「スーパーポップ」のあり方を変えた。例えば、いかにも古き良きアメリカン・セレブの典型だったテイラー・スウィフト。昨年のアルバム「Reputation」では全編で、SNS上で歪曲されていく自らのイメージを題材にし、PVではそれを逆手にとったビッチな自分像を壮大に演じている。SNSで話題になったこと、なりそうなことは全て盛り込んであった。同じくファッション誌のおしゃれスナップの女王ケイティ・ペリーも、SNSで作られる自己像と本当の自分との乖離については、不仲説で有名なテイラーと妙に足並みをそろえた発言をしている。

 それも、SpotifyやApple Musicなどのストリーミングが音楽ディストリビューションの主流になった時代ならではの現象とはっきり言えるだろう。ヒップホップ界の最もエキサイティングなトリオ、ミーゴスは、SNSのマネキンチャレンジのサウンドトラックに使用されることで自然発生的に話題が拡散し、昨年「Bad & Boujee」がビルボード・ホット100で1位を達成している。ファッションにとってインスタグラムが起爆装置のひとつであれば、音楽にも“ストリーミング映え”が必須になっている。

 SNSという情報の海。そのなか、ティーンの日常のリアルを撃つのに、マンハッタンにいても、アジアや東欧、アフリカ、中南米にいても、ほぼ優位性の差はなくなった。現代の“ペンキ屋トニー”は、地球のどこからでもミラーボールの下に立ちうる。自然、人種の坩堝ニューヨークもエンターテイメントのコンパクトな実験場として、ここ10年で面白さを急速に高めたのである。

PROFILE

アートライター、編集者

金子義則

雑誌『スタジオボイス』副編集長を経てフリーランスに。『Big』『kid’s wear』の海外各誌で東京担当エディターを務めた。カルチャー誌、ファッション誌などで取材記事やコラムを担当。展覧会も数多く企画・運営。