SPRING 2018 LOOKBOOK FASHION AS MUSIC STORIES 女性アーティストはパワードレスで闘う | CULTURE | BARNEYS NEW YORK

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FASHION AS MUSIC STORIES #1

女性アーティストはパワードレスで闘う

text: Masaki Uchida

 例えばマドンナ。もしも「ライク・ア・ヴァージン」のミュージック・ビデオで、彼女の衣装がウエディングドレスと、80年代を象徴したようなじゃらじゃらのアクセサリー姿ではなかったとしたら。もっと言えば、マリリン・モンローのイメージを意図的に踏襲した、あのブロンドヘアのルックスで登場していなかったとしたら。彼女はあのタイミングからポップの女王としてのキャリアを歩み始めていただろうか。

 ビヨンセがJay-Zをフューチャリングした「デ・ジャ・ヴ」。ミュージック・ビデオの終盤、彼女が目にも止まらぬ高速ステップを踏んでダイナミックな土煙を上げた時、その足元は素足だった。だからこそ、別の場面で、やはりパワフルなステップをハイヒールのブーツでキメる姿との対比が素晴らしかったのだ。

 レディー・ガガはどうか。30代を契機に、最近ではややシックなスタイルに舵を切ったようだが、もしもブレイク初期に見られた、着ぐるみやかぶり物スレスレの奇抜なファッションによるプレゼンテーションがなかったとしたら。生肉で出来たドレスを着ることがなかったとしたら。彼女は現在の知名度を獲得していただろうか。

 こうした考察を “後出しジャンケン”だと斬って捨てるのは容易いし、ある意味では正しい。だがもう一方で、ここまでに挙げた例がいずれも彼女たち自身によるセルフ・プロデュースの賜物だったという事実を、そして、だからこそ世界中に与えたインパクトとその成果が尊かったのだという結果を無視することは出来ないと思う。

 パワー・ドレッシングの起源を語るとするならば、ポップ・ミュージックのみならず、80年代、アメリカのテレビドラマから火が付いたいかり肩のジャケットや、昨年末に逝去したアズディン・アライアが生んだボディ・コンシャスについても触れておくべきだろう。女性の社会進出にともない、男性たちと互角に渡り合うためにキャリアウーマンたちが選んだスタイルの隆盛と、音楽とファッションがパンク・ムーブメントによって究極の蜜月を迎えた70年代以降の潮流として決定打となったMTV開局 ―― つまり音楽の視覚的なイメージ戦略の幕開け ―― は、いずれも80年代初頭の出来事だった。

 マドンナとビヨンセとレディー・ガガ。彼女たちの共通点は常に“闘ってきた”ということだ。敵は、時にセクシャリティであり、時に表現のタブーであり、時にジェンダーや人種、性的嗜好に対する偏見や差別であり、またある時はアメリカという国であり、さらにある時は自らの出自やファミリー・アフェアに向けて浴びせられた世間からの誹謗中傷だった(※ここでカート・コバーンの未亡人であるコートニー・ラブの名も添えておく)。

 そうした闘いへ彼女たちが身を投じる時、ファッションは戦闘服の役目を担った。アリアナ・グランデもテイラー・スウィフトもケイティ・ペリーも、そうした先達のパフォーマンスから多かれ少なかれ何かを感じてきたことは想像に難くない。

 ビョークは男女間の愛や憎しみのみならず、教育や博愛にも目を向けた表現を、無二のアートフォームにまで昇華させたファッションでリスナーを魅了し続けている。ノラ・ジョーンズの佇まいは常にナチュラルだが、時折、絶妙な匙加減でミックスするハイファッションのアイテムやキュートな小物にセンスの良さが光っていることをこの機会に記しておきたい。

 直近の注目株を紹介しておこう。イギリスからはチャーリーXCX。2014年頃から脚光を浴び始め、すでに欧米ではチャート上位に名を連ねている存在である。昨年のサマーソニック出演が惜しくも健康上の理由からキャンセルされたため、今後の来日に期待が募る。アメリカからは、キューバ生まれのカミラ・カベロ。フィフス・ハーモニー脱退後、初のソロアルバムがリリースされたばかりだ。そしてカーディ・B。デビューシングルからビルボード・ホット100の首位を獲得した、元ストリッパーという異色の経歴を持つラッパーである。

 ミュージック・シーンで活躍する女性たちのスタイルは時代が求める女性像と多分にリンクしている。前述の名前の中には、日本でも話題の“ミレニアル世代”も含まれている。昨日までとは違う音楽を聴いて、昨日までとは異なるアイテムをまとう。その先には、思い通りの今日が、もしくは思いもよらない明日が待っているかもしれない。まさしく彼女たちのように。

PROFILE

ライター、編集者、ディレクター

内田正樹

雑誌『SWITCH』編集長を経てフリーランスに。これまでに様々なメディアにおいて数々の国内外のアーティストやデザイナーのインタビューを担当。また公演カタログやCDブックレット、ファッションページのエディトリアルやコレクションショーのコピーライティング、コラムなども手がけている。編著書に『椎名林檎 音楽家のカルテ』ほか。