2016/06/09
#(HASHTAG) NEW YORK! Vol.11
Upper Level Gallery View: Embroidery Case Study
Dress, Yves Saint Laurent (French, 1936-2008), spring/summer 1983 haute couture; Courtesy of Fondation Pierre Bergé-Yves Saint Laurent, Paris
© The Metropolitan Museum of Art
VERY BARNEYS!なニューヨーク情報を現地在住の高久純子さんがお伝えいたします。 オートクチュール VS レディトゥウェア。二つの対局する技術が織りなしてきたファッションの歴史を紐解き、近未来の服づくりに思いをはせる。
オートクチュールとレディトゥウェアの行きつくファッションの過去と未来
毎年、最大動員数を塗り替え、ヒットエキシビションを連打しているメトロポリタン美術館のコスチューム インスティテュート。2016年の特別展は、[MANUS X MACHINA: FASHION IN AN AGE OF TECHNOLOGY](=手仕事×機械: テクノロジー時代におけるファッション)と題され、恒例のレッドカーペット・ガラ パーティーで華々しいオープニングを飾り、一般公開がスタートした。
Upper Level Gallery View: Case Study
Wedding Ensemble, Karl Lagerfeld (French, born Hamburg, 1938) for House of Chanel (French, founded 1913), autumn/winter 2014-15 haute couture, back view; Courtesy of CHANEL Patrimoine Collection
© The Metropolitan Museum of Art
会場には、100点以上ものコスチュームを展示し、手作業によるオートクチュールと、最新のテクノロジーを駆使したレディトゥウェアの服を対比しながら、ファッションの歴史における二つの手法の違いに迫る。1880年代のローブドレスから、1970年代の<イヴ・サンローラン>のカクテルドレス、昨年発表のカール・ラガーフェルドによる<シャネル>のスーツまでが展示され、19世紀のオートクチュール創設期から、機械化により衣服の大量生産が可能になった変換期、そして、とどまることを知らない現代のテクノロジーの進化を深く掘り下げている。
Upper Level Gallery View: Embroidery
© The Metropolitan Museum of Art
手仕事による刺繍やレースワークなど、熟練の職人よる手作業は、細部にわたるまで、気の遠くなるほどの緻密性と芸術性を感じさせる。思わずため息が出てしまうほどの美しさ。そして一方、機械製のものを見てみると、細かいレザーの立体カットワークや、繊細なプリーツ加工など、クラフトマンシップに負けない重要なディテールを、服そのものに与えていることに気づかされる。
Lower Level Gallery View: Pleating
© The Metropolitan Museum of Art
キュレーターであるアンドリュー・ボルトン氏も「オートクチュールとレディトゥウェア。手作業と機械の仕事という違いがあるが、近年この違いが曖昧になっている」と語っている。ファッションの歴史は、職人とデザイナーがつくりあげてきたアルチザンの技術や世界観を、機械化によっても損なうことなく、さらに精度や感度を高めてきた稀有な分野といえるのかもしれない。
会場には近未来に実現する予定の、3Dプリンターによる服づくりのプロセスも紹介されている。近い将来、自宅の3Dプリンターでお気に入りのデザイナーの服をプリントアウトして着るという日も、そう遠いものではない?!
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MANUS X MACHINA: FASHION IN AN AGE OF TECHNOLOGY
NOW THRU 8/14
THE METROPOLITAN MUSEUM OF ART
1000 5th Ave, New York, NY
http://www.metmuseum.org/exhibitions/listings/2016/manus-x-machina

PROFILE
JUNKO TAKAKU
(absolute te-ma & company)
ファッション雑誌編集者を経て渡米。NYをベースにファッション、ライフスタイルビジネスのコンサルティングを手掛ける。