2014/01/09

BARNEYS SALON Vol. 2:

大宮エリー

BARNEYS SALON Vol. 2: 大宮エリー

バーニーズ ニューヨークのメンバーズプログラム〈MY BARNEYS〉の企画としてスタートした「BARNEYS SALON(バーニーズ サロン)」。ファッションやアートをはじめ、カルチャーの様々な分野からゲストをお招きするシリーズの第2回では、作家の大宮エリーさんを迎えてトークショーが行われた。ファッションの話では自己演出の方法論で参加者を笑わせつつ、旅での話へと展開するとマネしたくなるような服選びのアイデアも披露。あっという間だった60分のトークショーをレポートする。
text by Ryohei Nakajima

 CMの演出や脚本の執筆、TVやラジオ番組への出演、そして作家としての執筆活動。さまざまな分野で活躍する大宮エリーさんは、「通常は焼酎を割るためのホッピーを何に合わせるとおいしいか」というテーマだった深夜のTV番組『タモリ倶楽部』に出演し、どんどん悪酔いする様子が放送されてしまったという話を自虐的に語りながらトークをスタートした。
「今日は"ファッション"と"旅"と"ギフト"をテーマに話してほしいということだったので、間ができるのを怖がって大阪人ぽく笑いでお茶を濁すことなく、ちゃんとこなそうと思います」と、笑いながら以前携わった演劇について話す。「演劇はこういうトークショーと一緒でライブなので、毎回お客さんの反応も変わるし、役者さんの演技も変わります。お客さんと作りあげていく感覚がすごく楽しいんです。そして、作る際に一番おもしろかったのが、衣裳なんですよ。キャラクターを描く上で衣裳はとても重要で、役者さんも衣裳がしっくりこないと役に入り込むことができないと思うんですよね」。
 ある作品では、酒乱の画家という役を登場人物として描いた。衣裳担当と話をしながら、グレー系のコートだけで地味過ぎることなく、貧乏でも舞台映えするように継ぎはぎにカラフルな布を使い、レースやデニムなどを合わせて素材感でアーティスト気質を演出。役者もその衣裳からキャラクター設定を読み取ると、その役柄には血が流れ始める。衣裳が重要な役割を果たすのだと身をもって体験したそうなのだ。

普段の服選びも自己演出として大切

 人と会うときの服装に無頓着であることも多かったという大宮さんは、自分が取材を受けた記事を見たときに「客観的にひどいと思って、演出家だから自分も演出しなくてはいけない」と痛感したという。
「クリエイター雑誌で取材を受けたりすることもあって...。そういうときは先方もクリエイティブな話を聞きたいはずだから、そういう服を着ていくと親切かなと。喜ばれます。"普通着ないよ~"みたいな服もあるじゃないですか。そういうのを着ていくと、先方も"おおー"とかなって、"引っかかった、引っかかった"みたいな(笑)。だから普段からそういう服を用意しておくんです。着る前に広げてみたときに"ちょっとおもしろすぎるかな?"みたいなのも、意外と着てみるとありだっりして。そうやって服を選ぶのも楽しいですよね」。
 もちろん、そうしたクリエイター衣裳をデートのときに着ることはなく、デートで選ぶのは「ちょっと白くて清楚で3歩ぐらい下がってるように見える服とか、素材がやわらかくて優しげに見える服」。状況を考え、それに応じた服選びをする。自分の服装を選ぶことで、相手との関係や場の演出も行ってしまう。
「洋服って結構思いやりだったりするじゃないですか。例えば披露宴のときに、年齢を重ねてくると"とりあえず黒でいいか"みたいになりがちですけど、そこで着物とかを着ていくと、新婦さんにお礼を言われたりして。そうやって招待してくれた人のことを考えて服を選ぶのも、思いやりなんじゃないかなって思っています」。
 旅に出るときの服選びも、大宮さんにとって大きな楽しみの一つだという。
「『アナザースカイ』という番組でスペインに行ったんですけど、スペインだと、フランスとかイタリアみたいにぱりっとした服装じゃなくて、その土地の人と仲良くなれそうな格好として古着をメインに選んだんですね。例えば、コスタ・デル・ソルでは結構海風があるところを歩いたんで、ハタハタハタってなるのがいいかなと思って、アメリカの古着で、全体的にグレーの生地ですが、背中や裾に花柄の赤いハギレが縫い合わせてあるようなものを選んだり、グラナダではレンガの街並に映えるかなと思って、鮮やかな青の服を着てみたり。一張羅っていうじゃないですか。武士が戦いに出るときにいいものを着ていくみたい。いろんな状況を想定していろいろと洋服を集めています。一つひとつの仕事に立ち向かうために」。

相手に気持ちを伝えるギフト

 服を選ぶことで状況や気分を演出できるとすれば、言葉にならない感覚を伝えることができるのがギフトだと考えている。
「喋る仕事もしていますけど、じつは割と口べたで、誰かのライブを観に行ったあとで楽屋に行ったりしても何を言っていいかわからなくなっちゃうんですよ。ホントにライブを楽しんでも、"○○さん、よかったよー!"とか、そういうのを私がいうとウソっぽく聞こえるんじゃないかとか思っちゃって。そのときに、ギフトに言わせるんですよ。旅に行っておもしろいものを見つけると、誰か友だちのことを想像してその人のために買っておいたりして。そうしたら、"なんかエリーちゃんからもらうもの、全部グッと来たんよ"っていわれて仲良くなった人もいるので、ギフトで伝えられることってあるんだなって」
「BARNEYS SALON」では、店内で売られているアイテムを組み合わせて、数量限定で販売するギフトボックスがゲストによって作られる。今回、大宮エリーさんは、シャンパングラスとフレグランスを組み合わせて「フランスの夏」を演出したり、来場者をイメージしながら「自宅で旅気分を楽しめる」アイテム選びをしてくれた。最後に設けられた質疑応答で、「もらって嬉しかったプレゼント」について質問を受けると、またそれまでのトークとは違った表情を見せて、締めくくった。
「私はもともと女っぽくしているのが苦手で、ディレクターとかをやっていると女だとなめられる気がして、男性っぽくしようとしたりしてしまいます。そういうのが板についてしまい困っています。だから逆に、"女なんだ"って思えるようなものをもらうと、恥ずかしいけど嬉しいです。例えば、前に<クロエ>の練り香水をもらったことがあるんですけど、銀のロケットみたいなのを開けるとそこに白いクリームのようなものが入っていて、それが練り香水でした。指で少しとって首すじに。香りを首から下げておくのっていいなって思って。これでもつけとけよ、みたいな感じで、さらっと女性らしいものをもらったりすると嬉しいですね」

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